「相続土地国庫帰属制度」利用者急増も対象は限定的……現実的な相続不動産の手放し方
相続した土地を国に引き渡すことができる制度として2023年にスタートした「相続土地国庫帰属制度」ですが、初年度の利用数はわずか258件にとどまりました。しかし、翌2024年度の利用数は1,229件と4倍以上に増加し、2025年5月31日時点の申請総数は3,854件にのぼっています。
利用者が急増している同制度ですが、どのような土地でも国が引き取ってくれるわけではなく、利用には一定の費用がかかる点にも注意が必要です。
「相続土地国庫帰属制度」とは
相続土地国庫帰属制度は、相続数や管理不全の空き家・空き地の増加といった社会問題を背景に2023年4月27日に開始した制度です。同制度により、一定の要件を満たす相続した土地は国に引き渡すことができます。
売れない土地や管理が負担になっている土地の処分方法のひとつとして注目されていますが、利用できる土地は限られているというのが実態です。
土地の要件
相続土地国庫帰属制度が利用できない土地は、以下のとおりです。まず、以下の要件の土地は申請ができません。
- 建物がある土地
- 担保権や使用収益権が設定されている土地
- 他人の利用が予定されている土地
- 土壌汚染されている土地
- 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
上記に該当していなかったとしても、審査によって以下の状態などが見られる土地は承認が下りません。
- 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
- 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
- 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
- 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
- その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地
建物が建っている土地や境界が未確定の土地、遺産分割で揉めている土地、勾配地や崖地などは対象外であることから、同制度を利用できるのはごく限られた相続不動産です。
利用には一定の費用がかかる
要件を満たす土地であっても、国は無償で引き取ってくれるわけではありません。まず、審査に出す時点で土地1筆あたり14,000円の手数料がかかります。また、承認された場合も10年分の土地管理費相当額の負担金が発生します。
負担金額は一概にいえませんが、市街区区域や用途地域が指定されている土地を除き、宅地は面積にかかわらず20万円です。立地などによっては100万円以上の負担金が発生する可能性もあります。
審査にかかる期間は平均8ヶ月
国庫帰属制度は、審査に時間を要します。審査が完了するまでの平均的な期間は8ヶ月とされていますが、法務省によれば事案によっては標準処理期間を超える場合もあるといいます。申請にも一定の期間がかかることを考慮すると、検討段階から実際に国庫に帰属するまでの期間は1年程度見ておいたほうが良いでしょう。
相続不動産の現実的な手放し方は「売却」
相続土地国庫帰属制度の対象は限定的で、国に引き取ってもらえるとはいえ一定の費用がかかり、審査にも時間がかかります。
たとえ売値が低かったとしても、やはり相続不動産の現実的な手放し方は売却です。速やかに手放したい場合は、不動産会社に買い取ってもらうという方法もあります。国庫帰属制度は申請にも1万円以上の費用がかかりますが、弊社の査定は無料です。相続した不動産を手放すことを検討されている方は、どうぞお気軽にご相談ください。
